2008年12月21日日曜日

若冲、最晩年の大作屏風 北陸の旧家で『象鯨図』発見



江戸時代半ばに活躍した日本画家伊藤若冲(じゃくちゅう)の「象鯨図屏風(びょうぶ)」が、北陸地方の旧家から見つかった。最晩年の大作とみられる。これまで存在は研究者にも知られておらず、貴重な発見となりそうだ。 (北陸報道部・鈴木弘)
 屏風は六曲一双(各縦一五九・四センチ、横三五四・〇センチ)で、右隻(うせき)に鼻を空に向けて水辺にうずくまる白いゾウが、左隻には潮を吹き上げながら水中に潜ろうとする黒いクジラが、中国伝来という紙に墨で描かれている。
 石川県の美術関係者を通じて、MIHO MUSEUM(滋賀県)の辻惟雄(のぶお)館長に鑑定の依頼があった。辻館長は▽波頭の独特な描写▽スケールの大きさ▽ゾウを描いた他作品との酷似-などから真作と判断した。一七九五年ごろの作と推定される。
 図柄が似た屏風は一九二八(昭和三)年、大阪美術倶楽部(くらぶ)の売り立て目録に掲載後に行方不明となった幻の作品がある。今回の作品は渦巻く波の迫力が増し、ゾウの尾やボタンの花が加わった点などが異なる。
 確認された屏風からは若冲の号などを示す「米斗翁八十二歳画」の落款や「若冲居士」の印が読み取れる。箱書きはないが、辻館長は「前作の評判が良かったことからもう一枚描いたのでは」と話す。同館によると、所有者の祖父の代からあり、ここ数十年は箱に入ったまま蔵で眠っていたという。保存状態は比較的良好だが一部修復が必要で、公開は早くても二〇〇九年秋以降になる見通し。
 <伊藤若冲> 1716-1800年。京都の青物問屋の長男として生まれ、20代で絵を学んだ。大胆な構図と細密な描写から“奇想の画家”とも呼ばれる。代表作に「仙人掌(さぼてん)群鶏図」(重要文化財)「菜虫譜」など。
(東京新聞)