2009年5月10日日曜日

【本】カンブリア紀の怪物たち

サイモン・コンウェイ・モリス著
約5億5000年前に生命の事件が起きる。現在も化石としてその姿が残る多様な生物が、爆発的な形で地球上に出現した。それが「カンブリア紀の大爆発」と表現される。現在とも変わらないような捕食動物を含む複雑な生態系であった。まだ植物も動物も上陸していない海洋生命の時代。三葉虫が繁栄した時代。
「カンブリア紀」は約5億5000年前に始まり約4億8500万年前まで続いた地球史における時代である。カンブリア紀は原生代の最後のベンディア紀の後に続き、カンブリア紀の後にはオルドビス紀が続いている。

 1909年8月31日火曜日、チャールズ・D・ウォルコットはカナダの驚異的な化石層バージェス頁岩を発見した。1~2mの薄い堆積岩の地層。この化石層は生物の甲殻、骨格だけでなく腐敗してしまう部分も化石化されている。腕足類、藻類海綿、クラゲなどの化石が残っている。バージェス頁岩はあるとき海の土手が崩れて酸欠状態で埋まり微生物の活動が行われなかったために腐敗せずに化石化した層だと考えられる。
ウォルコットの当時の解析では130種類の生物が含まれており、アノマロカリスに代表されるそれらの多くは分類不能と結論付けた。しかしその後の研究で現在の生物進化体系に分類できるようになってきた。僅か数百万年の間に多種多様な分化が行われたことになる。なぜこんなに複雑な進化が起きたのか。地球環境の変化として酸素の増加があげられる。生物が酸素を利用するように進化し、酸素を利用すると体を大きくすることができるようになった。すると他の生物を栄養分とする捕食生物が発生した。非捕食生物は逃れる術を身につけるために進化したと考えられる 動物に色がついたのもこの時代と言われている。コンパクトディスクやシャボン玉などのような構造色であった。視覚の発達によるものと考えられる。

年表:東北大学理学部自然史標本館『ツアーコース』の『地球生命の進化』より