2009年7月11日土曜日

【本】カウンターから日本が見える

伊藤洋一著

上質な料理を食べる場所としてのカウンター席。日本料理には定着しているが、世界のどこにもないスタイル。
カウンター割烹の源流は大正13年、塩見安三が大阪市西区新町に出した「浜作」。格式と権威のお座敷料理へのアンチテーゼとして登場した浜作は、各界の著名人が通う人気店となった。経済人らの後押しを受けて昭和3年銀座に進出。食材流通網や交通の発展とともにカウンター文化も全国に広まった。

日本で生まれた5つの理由
1.水が豊かで海と山の食材が多く、世界の先進国の中では最も早く調理が「食材保存」の制約から脱した。
2.海外諸国が持っているような階級制度や階級意識がなく、誰と誰が一緒になっても嫌がらないし、実際に特に問題も発生しない。
3.食べ物や調理方法に関する宗教的制約がなく、客も料理人も自由に発想し、調理を行える。
4.職人を尊ぶ日本の伝統から、板前が誰の前に出てもそれを当然であると受容する社会的枠組み、意識があり、腕のよい板前は「粋な存在」と尊敬される。
5.非常に安全な社会であって、そこに包丁があっても、それをその場で悪事に使おうという人物がほとんどいない。

以上の条件を満たす国は日本以外に見当たらない。
料理カウンターは日本の文化である。