柳井正 著
アジアに取り残され、稼ぐことを忘れた日本人に対するユニクロ柳井氏の苦言。
日本のバブルが弾けて以降の20年間、中国をはじめとするアジア諸国は、もの凄い勢いで経済成長を遂げてきた。日本だけが、90年代後半から横ばいを続け、全く成長していない。
政治の責任は大きい。バブル崩壊以降も、無駄の是正はなされず、非効率な組織がそのまま温存された。国際的に見れば、賞味期限の切れた業界を保護する一方で、グーグルやアップルのような産業を興す努力もしない。国民に日和って、景気対策という名目で公共事業などの応急処置を繰り返す。その財源は国民の預金を担保にした国債である。
今や国と地方を合わせた累積債務はGDPの約2倍に膨れ上がり、税収よりも大きな額を、国債発行して調達しなければ予算も組めない財政状況。ギリシャ危機は、日本にとって対岸の火事ではない。国民の意識と行動が変わらなければ、Xデーは早ければ3年以内に訪れる。
この国に必要なのは、国民一人ひとりが自分たちの立場や置かれた状況を正しく認識し、「何よりだめな日本」という現実を直視して、自らの誇りをもって、生きていけるだけの力をつけること。それは、経済的自立を目指すことと言い換えてもいい。稼げる個人、稼げる企業で溢れる国にしない限り、この国の破綻は免れない。