2021年4月17日土曜日

スパイの妻

所沢ミューズ シネマ・セレクション
世界が注目する日本映画たち Part19

上映後に黒沢清監督が登壇。
観客の質問に答えてくれた。
みなさん映画リテラシーが高い。
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登場人物の生い立ちや嗜好など脚本にないことは一切考えてないですね。蒼井優や高橋一生クラスの俳優になると聞いてもこないです。映ってること以外はどうでもいいと思ってます。演ってる人たち、観る人たちがそれぞれ解釈すればいい。変ですかね。
贅沢にも衣装は作りました。主人公だけでなく憲兵も。東出昌大のサイズはないですしね。当時の服はけっこう色鮮やかだったはず。とてもすてきな画になりました。
1945年頃の映画の台詞回しが脚本に書かれていた。今の言葉づかいとはちがう。俳優はすぐに狙いをわかってくれました。蒼井優がどなたがお好みですかと聞いてきたので「田中絹代ですかね」と答えました。田中絹代も蒼井優も意外に低い声なんです。見ておくべき田中絹代の映画を聞かれたので小津安二郎の「風の中の牝雞」を勧めました。
戦時中映画を作った動機は二つ。
ひとつは現代劇において社会は主人公を自由に動かしてくれない。戦中は現代に比べ物にならない緊張感があって主人公をより鮮明に描けると思ったんです。
もうひとつは現代劇では作りにくいハリウッドっぽいジャンル映画ができると思ったから。サスペンスでありメロドラマである映画を作れました。
編集やっていたら高橋一生は悪くない奴だろうし蒼井優は幸せになるべきだろうと考えたんです。撮影は終わってたので最後の字幕をつけ加えました。蒼井優も高橋一生もそんな結末を知らないで演じていたので映画を見て驚いていましたね。映画ってほんと面白いですね。