2009年12月26日土曜日

【本】知に働けば蔵が建つ


内田樹 著

資本主義企業における「労働にたいする対価としての賃金」はつねに労働が生み出した価値よりも(すごく)少ないのである。「自己を供物として捧げることで共同体を維持する」という太古的・呪術的な社会観に通底しているのではないか。おそらく「自己を他者への供物として捧げ、他者によって貪り食われる」というカニバリスム的時況そのもののうちに強烈な「快感」を覚える能力を得たことによって人類は他の霊長類と分岐したからである。人間は、すねをかじられてはじめて自分にすねがあることを知るという逆転した仕方でしかアイデンティティを獲得できない生き物である。