2008年12月30日火曜日

【本】誰も知らないトヨタ

片山修著

「トヨタはいま、歴史的危機にある」
トヨタ自動車副会長の張富士夫氏の言葉。
「危機」の意味するところは、「伸びきった兵站」であると指摘。
 
26ヶ国51箇所もの海外の生産拠点を抱え、さらにチェコ、中国、アメリカ、タイ、ロシアに新工場が稼動と、トヨタの戦線は急速に拡大。

開発、設計から製造、販売、サービスまでの機能を全世界でどう維持するのか。 全世界的にどう「人的資源」を確保するか。
かつてない世界規模のスケールと切実さをもって課題が迫っていることを実感して、トヨタの経営トップは危機感を募らせている。

真に注目すべきは、最高益を続けながらも自社の現状を「危機」と認識し、現状打破を目指すトヨタの「自己変革の体質」。
 
 「変えないこと、変わらないことは悪」 
 「毎日を最悪と思え」 
 「三年間、何も変えなければ会社は潰れる」
 
トップから現場まで、口々に「変わる」ことの重要性を述べ、「変える」ことを促す。
それは、問題があるから「変える」のではなく、問題を探してでも「変える」。
「変える」エネルギーを生むために、あえて社員に無理難題を突きつける。
 
答えを現地現物で、徹底的に見つけ出すために、有名な「5回のなぜ」を繰り返す。
「なぜ、なぜ」を追求するときには、「ああ、そうか」は禁句。
安易に納得すると、そこで思考が停止。粘り、執着心の不足。
トヨタの現場では、「真因」にたどり着くまで、思考し続けることを、入社時から徹底的に叩き込まれる。
 
では、急速にグローバル化する大トヨタに、「トヨタウェイ」を浸透させる秘策はあるのか。 
まず、これまで暗黙知であった「トヨタウェイ」を「知恵と改善」「人間性尊重」の2本柱にまとめて明文化し、価値観の共有を図っている。
そして「トヨタウェイ」の伝承機関「トヨタインスティチュート」を設立し、経営と実務の人材を育成している。
 
もちろん、海外に日本と同じようにトヨタウェイが浸透するかは未知数。
だからこそ、問題点を具体的に抽出し、改善のスパイラルを上昇させる。