ドラフトのOB柿木厚は言う。
「優れた企業は理念やフィロソフィーを持っています。しかし長いことやっていると、商品がその理念からズレてしまうことがある。ズレを感じたら企業の理念と自分の信念に立ち帰って、商品やブランドのあるべき姿を考えてみる」
デザインを「志」と「仕組み」と「表現」の3つの段階で考えてみるとドラフトの姿勢に近づける。
筆者は菊竹清則の「か、かた、かたち」理論を思い出した。
菊竹は50~60年代からデザインを「か=本質」「かた=実態」「かたち=現象」の3段階で捉える設計方法を提唱している。
用語は少々難しいが、実にシンプルで明快な考え方である。
眼に見えるのが「現象」。色や形、つまり表現の世界である。その奥に「実体」がある。ものを成り立たせる仕組みや構造、理論の部分。華道や空手なら型。ゴルフや野球なら、フォーム。型を覚えて形ができる。フォームをマスターすれば、いろいろな局面に対応できる。
さらにその奥の「そもそも」の次元に「本質」がある。
本質は志とも言いかえられる。理念・信念・フィロソフィーと呼んでもいい。
志をそのまま表現しても熱いことを言う人で終わってしまう。仕組みからつくるから社会をちょっと変えられる。けれども仕組みを維持するために人間をどこかに置き忘れてしまうのだ。
より多くの収益を出すシステムをつくるために、さらなる効率を追求する新技術を導入するために、人間が居場所を失っていく。
宮田のディレクションに貫かれているものは、仕組みを「そもそも」の次元に照らし合わせる姿勢である。
本質は何か、そもそも何のためかを考えて、仕組みからつくっていく。
志と仕組みと表現-
この3つが揃って「道」が見える。「道」は人のためのものである。志を忘れ、お金や機会のためになった仕組みに「道」はない。
「デザインするな」 藤崎圭一郎著
GGG
[DRAFT展 ブランディングとアートディレクター]
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