2010年8月24日火曜日

【本】フェルマーの最終定理

サイモン・シン 著
青木薫 訳

自然数n が3以上のとき、xn + yn = zn を満たすxyz はない。
「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」 ピエール・ド・フェルマーが『算術』の余白に書き残したメモ。1637年ごろ。


1995年にアンドリュー・ワイルズにより証明された。
ピタゴラスの定理を変形させたわかりやすい式。
これに解がないことを証明するために多くの数学者の知性と意欲と失意を必要とし、360年の時を要した。
ワイルズが取り組んだのは谷山・志村予想を証明すること。谷山・志村予想は1955年に日光の学会で発表された「楕円曲線はすべてモジュラー形式である」という予想。(なんでかはわからんが)これを証明することでフェルマーの最終定理を証明することとなった。

本書で興味深いのは日本人学者の活躍。谷山・志村予想の谷山豊、志村五郎の他に岩澤健吉や肥田晴三ら日本人数学者が貢献している。丁寧に記述されており誇らしい気持ちになりますね。
谷山豊は31歳にして自ら命を絶っている。盟友 志村五郎が述懐して述べている。
「彼は数学者として非常に注意深いという人では無かった。彼は沢山の間違いを犯した。だが良い方向に間違えるので、最終的には正しい答に辿り着くことが出来た。私は彼を真似ようとしてみて、良い間違いを犯すというのは実は非常に難しいのだということを知った。」

しかし、ワイルズに至るまで多くの知性と革命を必要とした複雑膨大な証明を、17世紀のフェルマーはいかなる方法で証明したのだろう。とてもわかりやすくエレガントなものなのだろうね。


【memo】
科学という営みは、ちょうど裁判のようなシステムで運営されている。科学理論は「合理的な疑問のすべてに答えられる」だけの証拠がありさえすれば正しいとみなされる。よって新たな証拠の発見により正とされていた理論が覆ることがある。それに対し、一度証明された数学の定理は永遠に真である。数学における証明は絶対なのだ。

「πが無理数だと知ったところで何の役にも立たないだろうが、知ることができるのに知らないでいるなんて耐えられないではないか」 数学者E・C・ティッチマーシュ

「川の長さは、水源から河口までの直線距離にπ(3.14)を乗じた長さが平均的。シベリアやブラジルのようになだらかな平原を流れる川は特にπに近づく」 地球科学者ハンス・ヘンリック・ステルム