2020年3月5日木曜日

丹下健三 戦後日本の構想者

豊川斎赫 著

「美しきもののみ機能的である」 丹下健三

「現代の技術は、再び人間性を回復しうるであろうか。現代文明は、はたして人間とふれあう通路を発見しうるだろうか。現代建築と都市は、再び人間形成の場たりうるだろうか。」私のささやかな体験は、これにたいして、イエスという答えを与えようとしているのである。しかしそれは、現代技術が、現代精神の象徴を空間形態のなかに創造しえたときにおいてである、といわなければならないだろう。そうして、それに対しても私はその可能性を信じている。
「空間と象徴」丹下健三 1965年 

丹下とどう対峙するか一丹下シューレのたどった道
1.国土・都市・建築|浅田孝と下河辺淳
2.部分から全体への回路|大谷幸夫と槇文彦
3.父殺しとポストモダン |機崎新と黒川紀章
4.言空一致による新しい建築の創造|神谷宏治と谷口吉生

2015年に戦後70年を迎えたが、これから30年後までに、われわれはどのような建築·都市·国土を構想できるだろうか。過去を忘れて奇抜なデザインを競うのではなく、むしろ丹下や丹下シューレの残してくれた豊穣な経験を読み解き、継承し、現実問題に応用することこそ重要ではなかろうか。こうした取組みが戦後100年の日本近代建築を有意義にし、21世紀の東京を構想する際に不可欠な方法になる、と確信している。 仮にこうした歴史意識が活かされない場合、「丹下の時代にあった建築はどこへ行ってしまったのか。戦後100年の最後の30年、建築関係者は丹下や丹下シューレの建築も言葉も理解できなかった」と将来の歴史家に書かれても、およそ反論できないであろう。
豊川斎赫 2016年