目次・要点
はじめに 「人類と建築の歴史」の衝撃 宮沢 洋
第1章
歴史主義建築はなぜ消えたのか
第2章
モダニズムと日本の伝統
第3章
人間の造形感覚
第4章
だ もど 振り出しに戻った人類の建築
補講 1
大宗教時代の建築を考える
中国や日本の寺はなぜ横長になってしまったのか
補講2
藤森照信塾長に聞く
「神は死んだ」からの「原点ゼロ」
おわりに 藤森照信
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動植物つまり生命の相からその下の鉱物の相へ。
生命の感覚から鉱物の感覚へ。
そして、鉱物の相のさらに下には 数学の相があった。
鉱物の結晶は幾何学に従って形が生まれる。
生命の相、 鉱物の相、 数学の相、自然界の造形はこの3相からなる。
そのなかで生まれ、それらを見て育った人間の内なる造形感覚も、おそらく 「生命の感覚、鉱物の感覚、 数学の感覚の、3相からなるに違いない。
その内なる3相を30年かけて掘り下げて、到達した底がバウハウスの デザインだった。
ふつうなら目に見えない、意識されない人間の内なる造形の原点を、グロピウスは目撃してしまったのである。
建築の歴史は"アメ玉説"
アメ玉の最初のねじれのとこ ろは、自然の石・土・木を使って建築を生み出した時代。 それに対して、20 世紀のねじれは工業製品の鉄とガラスとコンクリートを使って生み出した。 人類 は2度、 新しい建築を 「ゼロ」 からつくった。
20世紀建築の 「原点ゼロ」 を決めたのはバウハウスだ と思っている。 そのバウハウスの直前にオランダのデ・スティルがあって、 デ・ スティルのドゥースブルフ (オランダの画家 建築家、 1883~1931年)がバ ウハウスに教えに行ってる。 それでバウハウスで原点ゼロが決まった。 要するに四角い白い箱と大ガラスの組み合わせによる"構成"。
バウハウスが決めた原点ゼロをそれぞれの伝統文化に向けて、変質化させた人たちがグロピウス以降に現れて、ドイ ツに向けて変えたのがミース、フランスおよび地中海に向けたのがコルビュジェ。 スペインに向けたのがガウディ。 アメリカに向けたのがライト。北欧に向けたのがア アルト。日本に向けたのが丹下健三さん (建築家、 1913~2005年)ですよ。 世界の文化の数だけ方向がある。