建築の原形って幾つかあると思うのですが、これを説明するときに僕は「巣と洞窟」という例えを使っています。僕の中では巣というのは住む人に合わせてつくり込んでいく、しつらえていく、そういう場所です。いわゆる機能的に住むことができるというのが巣なんじゃないかと考えています。
それに対して、洞窟というのはもともとそこにある場所なので、住む人にとって住みよいかどうかというのはよく分からないんですよね。ただ、そこに入り込んでいって、中の凹凸や地形に対して住む人がいろんな発見をしていって、それで、何とか住みこなしていく。だから、つくり込まれた機能的な巣というものに対して、そうではなく、もともとあるところに入っていっていろんな手がかりを見つけたり、空間から刺激をもらったりしていろんな発見をしていく、それが洞窟です。
どちらかというと僕は洞窟的な場所のほうがこれからの住む場所としては楽しいんじゃないかという気がしているんですね。それは、つくられたものとできてしまったものの対比だと言えると思っています。
[ 藤本壮介氏 MARIOT-EVENT in SAPPORO 2008/1/30 ]
山形高畠「一の沢洞窟」 Photo A.Sasaki H.14/6/30