2010年10月10日日曜日

【本】エデン

近藤史恵 著

前作『サクリファイス』同様、一気読み。単純におもしろい。マンガみたいだなぁ。
チカ・白石誓のモノローグを通じて登場人物が生き生きと描かれる。チームエースのフィン・ミッコ、寡黙な優勝候補イタリアン・モッテルリーニ、そして若きフランスの星ニコラ。短いセンテンスで顔やしぐさがはっきり見える。あまり接したことのないロードレースの展開にワクワクしながら引き込まれていく。すっとルールや文化がわかる書き方がうまい。ツールの沿道にいたい。
映画にならないでほしいと思う。ニコラのキャラがくずれるといやだから。
パルミジャーノだけのパスタを食うミッコ。チカに律儀な自己紹介をするモッテルリーニ。こんなシーンも映像化できてしまっているから。

「ぼくは思う。
ここは、この世でいちばん過酷な楽園だ。過酷なことはわかっているのに、自転車選手たちは楽園を目差し続ける。
三週間の間、三千キロ以上の道のりを走り続けるという楽園。
楽園に裏切られる者も、楽園を裏切る者もいる。楽園を追われるものも、そしてまた舞い戻ってくる者も。
それでもこの場所はまぎれもない楽園で、自転車選手たちは誰もがこの場所を目差すのだ。」
「叩きのめされたとしても楽園は楽園で、そこにいられること、そのことが至福なのだ。」

・・・・・
エデンはどこの世界にもあるなと思う。
エースとアシストも。