2010年11月15日月曜日

【本】美術館をめぐる対話

西沢立衛 著

ホワイトキューブの先鞭MoMA。20年くらい前に行ったときは睡蓮の間にびっくりした。これはこの作品以外に使えないではないかと。そりゃそうだ。その作品以外に使わない部屋なのだから。作品のために箱がある。美術館のあり方というのを知りました。自在な展示に対応するのが美術館なのではなく、恒久的に作品を最適に人々に見せるのも美術館の大事な役割なのです、と。

十和田は作品と箱が同時進行した。コミッションワーク。作品が箱といっしょに街に置いてある、普通にとけこんでいるようだ。作品と箱を増やすこともできる。離れたところに増やすこともできる。行って体験しなければ。

SCAIやTKGは銭湯、倉庫をコンバージョンしたギャラリー。扱い作品のレベルも高いが空間がきもちいい。NYチェルシーを発祥とするスタイルで、「いいじゃない。ありのままの場所で。わざわざ設えなくていいよ」と。建築家の仕事をを否定するような力を持つ。同じような美術館が発電所からテート・モダン。ナビスコの工場からDiaビーコン。アーティストに空間が刺激を与えて作品を生み出す。生きた作家の現代美術作品ならではだ。

21世紀美術館は常設展示でMoMA的だが、企画展示では作家にインスピレーションを与える力をもっている。きっとそれは外国からの訪問者が「美術館はこれでいいのか」と感じるという地域へのオープンさ、カジュアルさなのでしょう。21世紀は自然にそこにある軽さがとてもいい。

進行中のルーブル=ランスは本館と同じくらいのタイムスパンの収蔵品をもっている。絵と彫刻を壁に展示するのではなく、長い展示室に独立させる。進行方向に時間順、横方向に地域別に並べて歴史と文化を感じられるようになるらしい。「ギャルリー・デュ・タン」「タイム・ジャーニー」と呼んでいる。新しい展示の提案が楽しみ。