2009年5月25日月曜日

次世代送電網 相次ぎ実験

ITを使って電力供給を最適に制御する次世代送電網「スマートグリッド」の技術開発が日本で本格化する。シャープや関西電力、堺市などは2010年度にもスマートグリッドの実証実験を実施。東京電力、日立製作所、伊藤忠商事なども東京工業大学と組んで共同研究に乗り出す。スマートグリッドはCO2排出量削減に有効とされる技術。蓄電池や太陽光発電など日本が得意とされる要素技術を生かし、脱炭素社会に向けたインフラ構築で先行する狙い。

 スマートグリッドの技術開発に向け、堺市が25日に環境都市推進協議会を設置。シャープや関西電力、蓄電池開発会社のエリーパワー(東京・千代田)などが参加する見通しで、スマートグリッドの具体的な実験内容の検討を始める。
太陽光発電システムを設置した堺市内の住宅をインターネットで結び、電力を一元管理することで省エネ効果を検証する。家庭で余った太陽光発電の電力を同市内の次世代型路面電車(LRT)などに供給する計画。スマートグリッドの実用化でシャープは太陽光発電装置の販売増を目指し、関西電力はきめ細かな電力調整で発電コストやCO2排出を抑制する。
 東京電力や日立、東工大などは10年度から東工大キャンパスと電力中央研究所で実証実験を始める。ユーザー側に計測器を取り付け、電力需要をきめ細かく管理。送配電網には蓄電池を組み込み、自然エネルギーで発電した電力を蓄える。
 太陽光や風力発電は出力が不安定で、設備容量が増えると電力の品質劣化の課題が指摘されている。実験では需要が急に落ちた場合は太陽光や風力発電の出力を落としたり、需要が急増すれば蓄電池から放電したりとシステム全体を制御し、CO2排出削減と電力品質向上の両立を目指す。