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ある日、幸之助は京都洛西にある鮎料理で有名な料亭を訪ね、部屋に入ってすぐ同行の青年にこう言った。
「きみ、このあたりの土地は全部わしのもんやで」
「ほんとうですか。へえー」
青年は”天下の松下幸之助さんだ。このくらいの土地は手に入れているのかもしれない”と思った。その途端、
「きみ、そう考えてみ、面白いやろう」
にっこりとほほえんで幸之助は続けた。
「このへんの土地も、この料亭も自分のもの。しかし、わしは電器屋やから鮎料理屋をやっている時間がない。だから、この料理屋さんに頼んでやってもらってる。そしてな、こうして鮎を食べに来るやろ。食べてお金を払うけど、それは鮎を食べさせてもらった代金ではない。鮎はもともとわしにタダで出してくれる。けどな、そのためにここの人たちが一所懸命にやってくれたから、何かしらのお礼を払うんや。そう思えば、きみ、このお店の人たちへの感謝の気持ちもより湧いてくるし、何よりも心豊かになるやろう」