
伊東豊雄 2007年
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多摩美術大学の八王子図書館は、建築好きの間ではかなり有名な作品です。設計は建築家の 伊東豊雄 で、2007年に完成しました。特に次のような建築的な話題で語られることが多いです。
1. 「アーチの森」と呼ばれる構造
最大の特徴は、大小さまざまなアーチが連続する空間です。
普通の建物は柱と梁のグリッドで構成されますが、この図書館ではアーチ自体が構造体となっています。内部ではアーチが交差しながら続き、まるで森の中を歩いているような空間体験を生み出しています。
2. キャンパスの「坂」をそのまま建築に取り込んだ
多摩美術大学八王子キャンパスは丘陵地にあり、敷地全体が緩やかな斜面です。
伊東豊雄はその地形を消さず、正門から続くスロープを建物内部まで引き込みました。そのため図書館の床には微妙な勾配があり、利用者は自然に「通り抜ける」感覚を持ちます。図書館でありながら街路や広場のような性格を持つのが特徴です。
3. ガラスとコンクリートが同一面になる高度な施工
外観を見ると、アーチ状の開口部にガラスがはめ込まれています。
実は曲面のコンクリート壁と曲面ガラスがほぼ同じ面に納められており、凹凸の少ない滑らかなファサードを実現しています。この納まりは施工難度が高く、設計だけでなく施工技術の面でも高く評価されています。
4. 「図書館らしくない図書館」
伊東豊雄は単なる本の収納施設ではなく、「人が集まり偶然出会う場所」を目指しました。
アーチによって緩やかに区切られた空間には、閲覧席や本棚が比較的自由に配置されており、どこにいても視線が抜けます。静かな閉鎖空間というより、キャンパスの公共広場の延長のような考え方です。
5. 構造家との協働が名作を生んだ
この建築は構造設計者の 佐々木睦朗 との協働でも有名です。
アーチはすべて同じ形ではなく、幅や曲率が異なります。それでも200mm程度の薄い壁厚で成立させるため、鉄骨とコンクリートを組み合わせた高度な構造システムが採用されました。建築学生が「意匠と構造の融合」の事例として学ぶことも多い作品です。
建築史的な位置づけ
この図書館は、せんだいメディアテーク に続く伊東豊雄の代表作の一つとされます。直線的なモダニズム建築から離れ、自然の地形や人の動きを建築に取り込む方向へ進んだ時期の重要作品として評価されています。
建築を見学するなら、まず外からアーチのリズムを眺め、その後に内部でアーチの大きさや交差の仕方を観察すると、この建築の面白さがよく分かります。特に夕方はガラス面に周囲の緑が映り込み、建物が風景に溶け込む様子が印象的です。
